建設工事に必須の施工計画書について、大まかな基礎知識をご紹介

建設工事ではさまざまな工程があり、その工程に関わる全ての人がスムーズに把握できるよう元請事業者は施工計画書を作成しなければなりません。今回はその施工計画書の大まかな基礎知識についてご紹介いたします。

1.施工計画書とは

施工計画書

街中を歩いていると建設中の建物を何気なく目にされていることでしょう。『○○建設』や『□□組』など建設会社の看板が掲げられていますが、実際の建設工事はさまざまな工程があるため細分化されており、それぞれ専門の業者が関わっています。さらにその専門業者がどのタイミングで工程に入り、次の工程の業者がいつのタイミングで作業を進めれば良いのかなど、スケジュール管理もかかせません。細かく言えば、工程ごとにどのように作業を進めるのか、どのような機材・資材を使うのか、また安全管理や品質管理はどのように行われているかなど記載項目は多数あります。

これだけ読むと大変だな、面倒だ、と感じてしまうかもしれません。しかし、スムーズかつ安全に工事を進められるようにするには、この施工計画書はかかせません。言わば、その現場の総括表のようなものです。下記にて、施工計画書の目的や記載すべき内容など、順を追って説明していきます。

2.施工計画書を作成する目的とは

施工計画書

施工計画書は、工事の計画をすべての関係者が同様に理解し、スケジュールや規則などに沿って工事を進め完了させることが目的です。工事をスムーズかつ安全に進めるためにも必要不可欠なのです。施工計画書の目的を理解していないと後に色んなことに影響してきます。建設業法などで作成が義務づけられているものですので、作成は必須となります。施工計画書を提出し受理されるまでは工事に着手もできません。また、詳細の工事工程なども記載するものなので、工事費の算出にも必要になってきます。

3.『施工計画書』と混同しやすい『総合施工計画書』・『工種別施工計画書』

施工計画書

建築工事業界と土木工事業界で施工計画書の捉え方が異なります。それは国土交通省の仕様書などがそれぞれで定められているためです。ちなみに建築工事と土木工事の違いについては、明確な境界線はありませんが、土木工事は地面の下に関する工事、建築工事は地面の上に関する工事という使い分けだとわかりやすいでしょう。

建築工事業界の方は、総合施工計画書と工種別施工計画書を作成する必要があり、土木工事業界の方は施工計画書を作成する必要があります。今回こちらの記事は、土木工事向けの施工計画書についての説明となりますが、総合施工計画書・工種別施工計画書に記載する内容や目的は重複する部分も多いため、建築工事業界の方にも参考になるでしょう。ただし調べるには、違いを知っておく必要はあります。

4.施工計画書の記載内容

施工計画書

実際の記載内容は、工事の内容や企業によっても違ってきますが、基本的には、工事の施工手順や工法・工程、使用する機械・資材などから、安全管理・品質管理などです。施工計画書の書式については特に決まっておりません。
建設工事に関わるすべての人が施工計画書を読み、それに沿って工程を進めていきます。誰が、どのタイミングで、どのような機材・資材を使用し、作業を行うのか、また工程の際には、どのような安全基準で行うかなどの詳細を記載しておく必要があります。

施工計画書には、どのような項目を記載すべきなのかを下記にて説明していきます。

(1)工事概要
(2)計画工程を示す
(3)現場組織表
(4)指定機械
(5)主要船舶・機械
(6)主要資材
(7)施工方法を示す
(8)施工管理計画
(9)安全管理面を示す(安全管理活動の計画、責任者の策定、緊急連絡体制など)
(10)緊急時の体制及び対応
(11)交通管理
(12)環境対策
(13)現場作業環境の整備
(14)再生資源の利用の促進
(15)その他

(1)工事概要

工事概要については、工事名・工事の場所・工期・発注者・請負者・請負代金などを記入します。また工事内容については工事数量総括表の工種、種別、数量等を記入します。

(2)計画工程を示す

まずは、工程ごとの開始時期と終了時期が把握できるように工程やその順序を記載します。また気象・気温によって影響が大きい工程については、過去のデータを参考にし、工程計画に反映させましょう。

(3)現場組織表

さまざまな組織が関わっているため、誰が何に関わっているのか、人員の編成や命令系統やそれぞれの業務分担がわかるように記載します。また責任者についても明記するようにしましょう。

(4)指定機械

どのような機械を使用するのかを全て記載します。また設計図書や仕様書などで指定されている機械の情報(名称や台数、規格など)も記載します。

(5)主要船舶・機械

工事に使用する船舶・機械で主要なものを記載し、摘要欄に用途を明記します。また交通船と監視船が兼用の場合は、 摘要欄に記載します。

(6)主要資材

工事に使用する資材の情報(品名や数量、規格など)についても全て記載します。また納入方法や保管方法などについても確認し記載しておきましょう。

(7)施工方法を示す

工程ごとの作業フローや留意点、作業時期、使用機械、また周辺環境における制約条件などを記載します。また仮設備の構造など、概略図などを使用し具体的に記載します。現場条件に即したものとなるように注意しましょう。

(8)施工管理計画

施工管理計画については共通仕様書などに基づき、出来形や品質、工程など、工事全般の管理方法について記述します。必要に応じて図表なども使用します。

(9)安全管理面を示す(安全管理活動の計画、責任者の策定、緊急連絡体制など)

安全管理において必要な活動や組織、その責任者について記載します。安全教育や安全訓練などの活動の参加者や開催頻度、現場内の点検整備についても記載しましょう。また危険物を使用する場合は、保管や取り扱いについても記載します。

(10)緊急時の体制及び対応

自然災害が発生した場合などの、体制や連絡系統を記載します。

(11)交通管理

工事に伴う交通処理及び交通対策について記載します。交通安全対策や規制方法、迂回路の図面や案内図を記載し、交通誘導員等の配置について記載します。また、主要材料の 搬入・搬出経路について記載します。

(12)環境対策

周辺地域の生活環境の保全のため、騒音・振動、産業廃棄物や粉塵の処理などについて対策計画を記載します。

(13)現場作業環境の整備

現場作業環境や事務所の整備に関して、仮設関係や安全・営繕計画などを記載します。

(14)再生資源の利用の促進

再生資源利用の促進に関する法律に基づき、 再生資源利用計画書やマニフェストなどを記載します。

(15)その他

官公庁への手続きや地元への周知などについて記載します。

もしも記載した内容に変更が生じた場合、変更内容を反映した変更施工計画書を工事に着手する前に、その都度提出しなければなりません。

5.まとめ

施工計画書

今回は、施工計画書の大まかな基礎知識についてご紹介いたしました。大変だなとか面倒だなと感じていた方もなんとなくイメージがつき内容も整理できたのではないでしょうか。冒頭でもお伝えした通り、スムーズかつ安全に工事を進められるようにするには、この施工計画書はかかせません。作成担当者は正しい知識を身につけておきましょう。